ツインクロス
感情がこもって思わず零れ落ちた涙に。
(泣いてたらダメだ…。もうすぐ雅耶が来ちゃうかも知れない…)
慌ててランドセルを元の机の上に戻すと、手の甲でゴシゴシと目元の涙を擦った。
どうしても、思い出が一杯のこの部屋にいると泣きそうになってしまうので、冬樹は早々に子ども部屋を後にした。
二階の他の部屋をそっと覗いて、それぞれ特に変わりのない様子を確かめると、冬樹はまた階段を降り始めた。
が、ふと…違和感を感じる。
(あれ…?さっき…向こうのドア…開いてたっけ…?)
階段の途中から見える位置にある、奥の部屋へと続く扉が僅かに開いているのだ。
(向こう側には、まだ行ってない…。さっき上へあがる時はしっかり閉まっていた筈だ…)
冬樹は下まで降りると、足を止めた。目の前の玄関には、自分の脱いだ靴のみが置かれている。
(雅耶でも、ない…)
第一、雅耶なら勝手にあの奥へ入って行く筈がない。
(あの奥は…お父さんの部屋…だ…)
父の仕事関係の物が沢山置いてある部屋で、普段父が不在の場合は鍵が掛けられていた、いわゆる『書斎』のようなものだ。父の許しがない限りは、入室を禁じられていた部屋。
(鍵が…開いている…のか?)
あの事故があった後、伯父の家に引き取られて行く前には確か、鍵が掛かっていたのを覚えている。
(いったい…誰が…)
その部屋の鍵を開けられたのか?
そして、今、まさにその扉を開けたのは…?
冬樹は警戒しながらも、その扉へ吸い寄せられるように近付いて行った。
そっと…扉を押すと。
キィィ…と、小さく音が鳴り、扉は奥へと開いた。
「………」
その部屋には窓がない為、暗闇が広がっていて中の様子は良く見えない。
神経を研ぎ澄ますように、警戒しながら中を伺う。だが、特に何者かの気配を感じることは出来なかった。
瞳を凝らして見てみても様子の分からないその闇の中に、冬樹が一歩…足を踏み入れたその時だった。
「――っ!?」
まるでその一瞬を狙っていたかのように。
突然、闇の中から伸びてきた腕に掴まれ、部屋の中に勢いよく引き込まれた。
咄嗟のことで反応出来ず、よろめいた次の瞬間。
ダンッ!!
両肩を正面から掴まれ、その背を壁に思い切り打ち付けられた。
「ぐっ…は…っ…」
反動で後頭部も強打した冬樹は、息を詰まらせた。
(泣いてたらダメだ…。もうすぐ雅耶が来ちゃうかも知れない…)
慌ててランドセルを元の机の上に戻すと、手の甲でゴシゴシと目元の涙を擦った。
どうしても、思い出が一杯のこの部屋にいると泣きそうになってしまうので、冬樹は早々に子ども部屋を後にした。
二階の他の部屋をそっと覗いて、それぞれ特に変わりのない様子を確かめると、冬樹はまた階段を降り始めた。
が、ふと…違和感を感じる。
(あれ…?さっき…向こうのドア…開いてたっけ…?)
階段の途中から見える位置にある、奥の部屋へと続く扉が僅かに開いているのだ。
(向こう側には、まだ行ってない…。さっき上へあがる時はしっかり閉まっていた筈だ…)
冬樹は下まで降りると、足を止めた。目の前の玄関には、自分の脱いだ靴のみが置かれている。
(雅耶でも、ない…)
第一、雅耶なら勝手にあの奥へ入って行く筈がない。
(あの奥は…お父さんの部屋…だ…)
父の仕事関係の物が沢山置いてある部屋で、普段父が不在の場合は鍵が掛けられていた、いわゆる『書斎』のようなものだ。父の許しがない限りは、入室を禁じられていた部屋。
(鍵が…開いている…のか?)
あの事故があった後、伯父の家に引き取られて行く前には確か、鍵が掛かっていたのを覚えている。
(いったい…誰が…)
その部屋の鍵を開けられたのか?
そして、今、まさにその扉を開けたのは…?
冬樹は警戒しながらも、その扉へ吸い寄せられるように近付いて行った。
そっと…扉を押すと。
キィィ…と、小さく音が鳴り、扉は奥へと開いた。
「………」
その部屋には窓がない為、暗闇が広がっていて中の様子は良く見えない。
神経を研ぎ澄ますように、警戒しながら中を伺う。だが、特に何者かの気配を感じることは出来なかった。
瞳を凝らして見てみても様子の分からないその闇の中に、冬樹が一歩…足を踏み入れたその時だった。
「――っ!?」
まるでその一瞬を狙っていたかのように。
突然、闇の中から伸びてきた腕に掴まれ、部屋の中に勢いよく引き込まれた。
咄嗟のことで反応出来ず、よろめいた次の瞬間。
ダンッ!!
両肩を正面から掴まれ、その背を壁に思い切り打ち付けられた。
「ぐっ…は…っ…」
反動で後頭部も強打した冬樹は、息を詰まらせた。