ツインクロス
(まさ…や…。来ちゃ…ダメ…だ…)
男は「チッ」…と小さく舌打ちをすると、雅耶の動向を探るように神経を集中させている。
雅耶は、玄関でもう一度「ふゆきー?」と声を上げているようだったが、返事がないのを確認すると、
「上がらせてもらうぞー?…お邪魔しまーすっ」
そう言って、家に上がったようだった。
雅耶の冬樹を呼ぶ声と足音がリビングの方へと移動したのを確認すると男は、
「…今日は引くが、逃げられると思うなよ」
そう、冬樹の耳元で呟くと。
締めていた首から素早く手を離すと、足早に部屋から出て行った。部屋を出た方向と足音から、向かった先は家の裏へと出られるキッチンの勝手口だと理解する。
(良かった…。雅耶に…危害を加えられなくて…)
そんなことを冷静に思いながらも、自身の身体はいうことが利かず、その場に崩れるように倒れ込んでしまう。
途端に咳が出て止まらなかった。
突然聞こえた人の足音と、別の物音に雅耶は反応すると、一瞬どちらへ向かうか迷ったが、すぐに冬樹の苦しげに咳込む声を聞いて書斎の方へと足を運んだ。その真っ暗で何も見えない部屋の中から、声を頼りに手探りで冬樹を探し当てると、雅耶は抱きかかえてとりあえず部屋を出た。
明るい場所へ連れ出してみて、やっとそこで冬樹の状態を目にすることが出来た雅耶は、一瞬我が目を疑った。
「冬樹っ…いったい何があったんだっ?」
ぐったりとした冬樹の、その細くて白い首には力を込められた手の跡のようなものがくっきりと赤く残っていたのだ。
「ま…さや…。ご…め…」
「バカ、何で謝るんだ」
雅耶は冬樹をリビングまで横抱きに抱えて来ると、ソファが汚れていないのを確認して、そこにそっと横たえた。
雅耶自身は床に膝を付き、冬樹の様子を横で見守りながら回復を待つ。
「も…う…大丈夫…だ…」
散々咳込んで呼吸も儘ならなかったのが、だいぶ落ち着きを取り戻してきた頃、冬樹がゆっくりと顔を起こして言った。
「無理するなよ…」
起き上がろうとする冬樹を制して、横にならせながら雅耶は言葉を続けた。
「何があった…?冬樹…。さっきまで、お前の他に誰かいたよな?」
真剣な眼差しで問われ。
何処まで雅耶に話したらいいのか、冬樹は考えていた。
雅耶を危険なことに巻き込みたくはなかった。
男は「チッ」…と小さく舌打ちをすると、雅耶の動向を探るように神経を集中させている。
雅耶は、玄関でもう一度「ふゆきー?」と声を上げているようだったが、返事がないのを確認すると、
「上がらせてもらうぞー?…お邪魔しまーすっ」
そう言って、家に上がったようだった。
雅耶の冬樹を呼ぶ声と足音がリビングの方へと移動したのを確認すると男は、
「…今日は引くが、逃げられると思うなよ」
そう、冬樹の耳元で呟くと。
締めていた首から素早く手を離すと、足早に部屋から出て行った。部屋を出た方向と足音から、向かった先は家の裏へと出られるキッチンの勝手口だと理解する。
(良かった…。雅耶に…危害を加えられなくて…)
そんなことを冷静に思いながらも、自身の身体はいうことが利かず、その場に崩れるように倒れ込んでしまう。
途端に咳が出て止まらなかった。
突然聞こえた人の足音と、別の物音に雅耶は反応すると、一瞬どちらへ向かうか迷ったが、すぐに冬樹の苦しげに咳込む声を聞いて書斎の方へと足を運んだ。その真っ暗で何も見えない部屋の中から、声を頼りに手探りで冬樹を探し当てると、雅耶は抱きかかえてとりあえず部屋を出た。
明るい場所へ連れ出してみて、やっとそこで冬樹の状態を目にすることが出来た雅耶は、一瞬我が目を疑った。
「冬樹っ…いったい何があったんだっ?」
ぐったりとした冬樹の、その細くて白い首には力を込められた手の跡のようなものがくっきりと赤く残っていたのだ。
「ま…さや…。ご…め…」
「バカ、何で謝るんだ」
雅耶は冬樹をリビングまで横抱きに抱えて来ると、ソファが汚れていないのを確認して、そこにそっと横たえた。
雅耶自身は床に膝を付き、冬樹の様子を横で見守りながら回復を待つ。
「も…う…大丈夫…だ…」
散々咳込んで呼吸も儘ならなかったのが、だいぶ落ち着きを取り戻してきた頃、冬樹がゆっくりと顔を起こして言った。
「無理するなよ…」
起き上がろうとする冬樹を制して、横にならせながら雅耶は言葉を続けた。
「何があった…?冬樹…。さっきまで、お前の他に誰かいたよな?」
真剣な眼差しで問われ。
何処まで雅耶に話したらいいのか、冬樹は考えていた。
雅耶を危険なことに巻き込みたくはなかった。