ひとつの村が消えてしまった話をする
辿静祭前日夜。

夜7時半になったので、俺は両親に『滋の家に忘れ物を取って来る』と言い、滋の家に向かった。

滋の姿が屋敷の待ち合わせ場所に無かった事から、滋は既に家から出ているらしい。

俺は葵との待ち合わせ場所に向かった。

「お待たせー」

元気よく葵が走ってくる。

「両親は大丈夫か?」

「浄縁神楽の練習をしてくるって言って、抜け出してきた」

優等生の葵は、これでも少し罪悪感を感じているようだが。

「そっか、滋が待ち合わせ場所にいなかったんだよ」

「そうなの?予定通りにいくのかな」

などと葵と話していると、数十分後に滋が到着した。

「どこいってたんだよ!」

「ごめん!開けておいた有刺鉄線の確認に行ってた。直されていたら元も子もないからな。直されていなかったから、一先ずはいけそうだ」

手を合わせて詫びる滋。

「そうなんだ、そろそろいこっか!」

その事は気にも留めず、葵が言う。

「ああ、数分で着くし、準備確認しながら行こう」

「了解」

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