ひとつの村が消えてしまった話をする
「ここからどうするんだ?」

「この森を北東に抜ければ、獣道へ出る筈だから、一先ずはそこに向かう」

滋の説明で、俺達は歩き出す。

「森の中、何か不気味」

「ああ」

怖いのか、葵が俺の腕に寄り添う。

俺達は懐中電灯を灯し、獣道へ向かって歩き出した。

山の中の村に住んでいるとはいえ、多くの獣が徘徊する森、俺達は獣が動き出す夜の森に入った事が無かった。

山犬の遠吠えが響き渡り、足元には蛇や虫が沢山いるかもしれない。

俺と滋は平気だが、葵がずっと俺の袖を摑んでいる事から、やっぱり女子なんだなと思う所もあった。

歩き始めてから、軽く30分は経ったと思う。

獣道にはまだ出ない。

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