ひとつの村が消えてしまった話をする
「!?」

その声は捻り出した様な声で、声だけでこちらを見ている気配がした。

「……」

俺は立ち止まってしまった。

後ろを振り向こうにも、恐怖心が勝り、硬直してしまった。

「アアア…アアアアアアアア……」

声が聞こえてくる、ゆっくり近づいてくる気配。

次の瞬間。

「おい!何やってる!」

滋が小屋に戻ってきた。

同時に消える後ろの声。

その瞬間に俺は滋に引かれ、滋は思い切り扉を閉めた。

「……」

「おい!大丈夫か!」

「あ、ああ…」

「ったく、葵もお前も大丈夫かよ!葵は奥の椅子で寝ちまってるし、お前はお前で扉の前で立ち尽くしちまってるし!うわ!おまっ…漏らしてんじゃんか!」

俺は失禁していた。

恐怖の余り、自分でも気付いていなかったのだ。

俺は今体験した事を滋に話した。

「それが何かは分からないが、とにかくこの小屋から出る方がよさそうだな」

「だな…」

「葵も連れて出るか」

俺達は物が散乱している部屋に戻った。

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