ひとつの村が消えてしまった話をする
俺と滋が事の話をすると、神主は俺と滋を思い切り殴った。

神主の妻、つまり葵の母も話を最後まで聞いた瞬間に気絶してしまったり、俺や滋の両親もずっと俯いたままだった。

両親、親族に迷惑をかけた俺は、村から追い出されると思っていた。

「話を聞けば聞くほど、俄かに信じられんような内容だが、今から私や一族が話す事は、もっと信じられんような内容だ。心して聞け」

神主は睨むような目で俺達に話した。

…神主や神主一族が語った内容、教えてくれた内容を纏めると、俺達が行った小屋というのは、村の伝承に語られる『鬼小屋』と呼ばれる小屋だそうだ。

村人の殆どはこの伝説を知っており、俺と滋の話を聞いていた村人の中には、『本当に小屋があるとは』とか『若い頃は探して年寄り連中に叱られた』と話す者が多くいた。

神主によれば、この小屋は伝説では無く実在するが、小屋の存在自体から招かれなければ行く事は出来ないらしく、神主自身も過去にこの小屋を見つけようと探した事があるそうだ。

小屋に招かれれば、招かれた者は無意識に小屋へ向かうようになるという。

その場合、小屋以外の目的で障芽池の森へ入ると、その目的の先には小屋が現れる。

要約すると、俺達はこの小屋に招かれてしまった為、目的であった障芽池や森の祠に辿り着く事が出来なかったというのだ。

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