ひとつの村が消えてしまった話をする
村人が消滅したこの村には、後に現在の神主一族の先祖『初代神主』の一家が引っ越し、村復興の始めに村の守り神となる神社を立てた。

家や道に残された村人の骨を村奥の池に水葬した後、村奥の池に集まった、村人の怨念を封印し、名前を障芽池と名付け、池自体を名前で縛った。

後世にも自分の力が村を守るようにと、自分の力を封印した石と、その石を祭る祠を村奥の森の中に立てた。

強い怨念が留まり続ける、村奥の森の小屋の2階の扉を封印し、小屋自体を人の認識外へと封印した。

しかし初代神主の力では認識外への封印が限界で、それが招かれれば行けるという隙を作る結果となってしまった。

初代神主は子孫達に、この小屋を鬼小屋と語り、中に住む者を障者と呼んでいたそうだ。

初代神主は、この村で死んだ村人を弔う為、この村に生きる村人を村の鬼から守る為、この村で生まれた鬼を外界に出さない為、8月15日に神社で行う村全体での祭り、即ち辿静祭、鬼無し踊り、浄縁神楽を残した。

村の伝承を残す用意をした過程で生まれた、幾つかの綻びを繕う為に、初代神主は最低限の三つの禁を残した。

初代神主は村に引っ越してきた者達、即ち今の村人の先祖達に、永久に村を守れるようにと、この村の伝承を受け継がせた。

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