ひとつの村が消えてしまった話をする
障者
1本の獣道を進む。

途中から、山の獣の声が聞こえなくなってきた。

「そろそろか」

「だな」

息を飲みつつ、俺と滋は進む。

怖い。

怖くない筈はない。

…そんな場所に、葵1人を置いてきてしまった。

ずっとずっと幼馴染みで、女子の葵を、たった1人で…。

暗がりを抜けた先には、小屋があった。

俺と滋は、無言で道具の最終確認を行った。

「あれ」

「どうした?」

俺の声に滋が顔を上げる。

「いや、鋏なんて入れたっけなって思ってさ」

「裁断鋏か、何かの役に立つんじゃないか?」

首を傾げつつ。

俺と滋は作戦の最終確認をした。

< 41 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop