ひとつの村が消えてしまった話をする
部屋の中には、全裸の状態で手を天井から吊るされ縄で縛られ、足を紐で床に固定された葵がいたものの、中に障者はいなかった。

「葵!」

俺は葵の縛られている姿よりも、単純に生きていた事に喜び、葵を縛っている縄を鞄に入っていた裁断鋏で切り、清めの水を口に含ませ、背中にそのままお札を張り付けた。

そして、塩を身体に振りかけた。

これで助かるのか?

衰弱し切って動きのない葵。

俺には分からない。

とにかくここを連れ出すしかなかった。

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