ひとつの村が消えてしまった話をする
葵を抱え、2階の階段を降りる直前だった。

「…後ろ…!」

蚊の鳴くような声で葵が言う

後ろを振り向いた俺の前に。

「――――――――!」

首を吊られたまま、こちらを見つめる黒い何かが、俺には聞き取る事の出来ない言葉を発していた。

さっき葵を下ろした時にはいなかったのに。

こいつが障者という奴か…!

俺は神主から教わっていた真言を唱えた。

だが、障者は意に介した様子もなく、こっちに近づいてくる。

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