ひとつの村が消えてしまった話をする
8月15日、辿静祭当日、午前10時。

葵の禊が終わり、障者によって障られた部分、簡単に言えば身体全体の清めが始まった。

葵と俺は全裸に白装束を纏った状態で、祝詞の途中で何度も冷水を身に浴びる。

葵は途中で涙ぐんでいる所もあったが、3時間の清めを乗り切った。

最後、自分の身体から何かが消えていくように体全体が軽くなった。

清めを終えた俺は、神主から葵の事について教えて貰った。

「葵や君の穢れ障りは、これで完全に消滅した。葵についてだが、身体の至る所から障りが抜けて行くのを私は見た。恐らくあの小屋では監禁と同時に、暴行に近い行為を何度もさせられたのだ」

当然の事だが、神主の手は怒りに震えていた。

俺に何故、その話をしたのかを神主は語った。

「何れ君が葵の傍に付いて、正しい判断を下す時がくるだろう。葵は君の身を気に掛ける。今度こそ、君が正しい判断をする事を私に誓ってくれ」

俺は神主の予言めいた言葉を聞き、今度こそ葵を守ると強く誓った。

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