ひとつの村が消えてしまった話をする
8月16日、午前8時。

神主によれば、昨日村を脱出した人は30人近くいるらしく、殆どが老人の方だそうで、その殆どが老人ホームに暮らす事になるそうだ。

真夜中に村を出た一家によれば、田圃の畦道に身長120センチ程度の、顔が血に塗れ、手が6本生えた獣が立ち尽くしていたそうだ。

その獣の傍を車が通りかかると、足元には山犬の頭が転がっており、脳髄を引き出して遊んでいたそうで、こちらには見向きもしなかったらしい。

神主によれば、この獣は食人された村の子供達の怨念が形を変えて現れた存在らしく、人を襲わないが、人以外の動物を玩具にするそうだ。

これも村に封印されていた怪の一種らしい。

「今話したような怪異の一種に、現象となって現れる怪異そのもの、そしてその怪異の元とも言われる『因縁』は、村から放たれている…所縁、因縁といった存在は、村と関係した者、あの村を知る者、村の怪異そして因縁を知る者に取り憑き、更に因縁を拡大していく。因縁によって起きた災厄があの村をこれから襲う。何れ村が無人となる時、あの村は因縁の溜まり場、怪異の溜まり場となるだろう」

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