ひとつの村が消えてしまった話をする
俺が小学5年生の時の事。

俺と弟は、毎年夏休みになるとじいちゃんちに1、2週間泊まるって習慣があった。

けど俺らはまだガキだったから、じいちゃんちの障子を破ったり、クレンザーまき散らかしたり、ひどい悪戯ばっかやってた。

俺の両親はそれに激怒して一度出入り禁止にされそうになったんだけど、じいちゃん達は俺ら兄弟をえらく可愛がってたらしくて、やめるなって逆に両親を説得してた。

まあそれでその年も泊まりに来たんだけど、その時の話。

じいちゃんちの家の裏には畑があって、その隣にちょっとした林…雰囲気は森…がある。

で、森の真ん中には池があって、鯉を飼ってた。

弟が釣り好きだったんで近くの湖で鯉を新しく釣ってきて入れる事もあったんだけど、そんな時じいちゃん達はえらく喜んでくれた。

まあ結構釣る→入れるって感じでがんがん追加してたんだけど、池が鯉で一杯になる事は決してなかった。

じいちゃん達は『猫が食べちゃうんだよ』って説明してたし、俺らもそれで納得してた。

ある時、森の池を釣堀に見立てて釣りをしようって話になった。

俺は釣りに興味はなかったけど、じいちゃん達に『裏の池には絶対1人で行くな』って言われてたから弟についていった。

俺んちは結構熱心な仏教徒で無益な殺生はタブーだったんで、釣りっていってもキャッチアンドリリースか鯉こくとかにして食うかが基本、子供ながら無駄に殺したりはしなかった。

だから弟も鯉を殺さずに池に持っていってた。


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