ひとつの村が消えてしまった話をする
電話を掛け終わったじいちゃんは俺達の所へやってきた。

とても真剣な表情だ。

「もうお前達をこの家に上げる訳にはいかん。じいちゃん達が生きている間は、決してこの家へは来るな」

弟は突然の拒絶に『どうして?どうして?』と言って泣き喚いた。

俺もじいちゃん家が好きだったから、とても悲しかった。

俺達が落ち着くと、じいちゃんは言った。

「それはな、お前らがこの土地の守り神を怒らせてしまったからだ。守り神っていっても、うちにおる仏さんみたいな優しいもんじゃない」

そう言って、俺達にしばらく説明してくれた。

要点をまとめると、昔この土地に住み着いた先祖が神様に生け贄を捧げて、末代の祟りと引き換えに富を手に入れた事(狗神憑きみたいな感じ)。

うちで殺生が禁じられているのは、仏の教えというよりもその神様に付け入る隙を与えない為であるという事。

もし神様を起こした場合は、誰かが犠牲になってこの土地に縛られ、祟りを受けて鎮めなければならない事。

話の後で、じいちゃんは『今夜だけは帰れん、けど安心しろ、じいちゃん達が守ってやるから、 明日朝一番に帰るんだ』と言って、その日だけは泊まる事になった。

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