私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「授業始めるぞ~」
慌ただしく席に戻っていくみんな。涙をぬぐって顔を上げる。
探そう。待ってるだけじゃダメなんだ。
記憶も、戻って来ないって言うなら、探し出してやる。
強くなれ、弱虫のままじゃ、前へ進めないんだから。
「あれ、見学されますか?」
授業を始めようとした先生は不意に廊下を見て首をかしげる。
つられて廊下に視線を向けると、白髪の明らかに定年超えてそうな男の人がいた。
でも、歳の割に背筋が伸びてて、目にも強い力を感じる。笑顔を浮かべないその顔に少しだけ怖いって思った。
男の人は私たちを見つめて、不意に視線が交わる。その視線が外されなくて、私の方から視線を逸らした。
なんだろ、私何かしたかな…。逸らしたままでいると、危ないという声と誰かが転んだような音がする。
廊下を見ると、さっきの男の人がこけてて…え?
「ッ…」
咄嗟に立ち上がって廊下に出る。起き上がって座った男の人の傍に屈む。