私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「申し遅れてすまない。N大教授の守本だ」
自己紹介されながら差し出されたのは名刺。
受け取ると、確かに教授って書いてある。でも大学の名前聞いたことないし、英語…。それに後、医師と柔道整復師…?
「簡単に言えば、接骨院の先生で必要な資格だ」
また心読まれた!?先生はいたって真面目な顔で、見つめてくる。
「秋奈」
振り返ると六花がホワイトボードを持ってきてくれた。
それを受け取って、慌てて名前を書く。自己紹介してないもんね。
『宮田秋奈です。今は事情で声が出ません』
簡潔に書いて見せると、また頷かれる。な、なんだろやりにくい…。
「夏休みから来ていたが、会えなかったから子芝居を打った」
子芝居って、さっきのこけたこと…?この人何のためにここに…。
守本先生は私がやったテーピングを見て、また頷く。一体何が…。
「あの、守本先生?研究のために見学ということでは…」
「本人に知られるのは嫌だったものでね。ちょっと嘘をつかせてもらった。…宮田秋奈さん、私はキミをスカウトしに来たんだ」
「…?」
スカウト…?教室から少しざわつく音が聞こえてくる。
守本先生は、放課後、話をしようと言ってとりあえずと言うように去って行った。