私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「あれ、夏樹早いじゃん」
初めに気づいたのはリツキ。
平然としてるけどこの部屋の1番奥、紫炎の総長…兄貴がまた女襲ってた…。
しかも、下にいたような半分以上いかれちまった奴じゃない。
多分、秋奈のように何も知らない、まじめに生きてきたような奴。
やめろって言いたいのに恐怖が先だって声が出ない。
平然な顔でそれを見てるリツキが動かしてるパソコンは、目の前で起こってることを映していて…。
兄貴は下の奴らに命令して、何も知らないような女を攫って来て、今と同じように襲ってる。
しかも、何日も閉じ込めて、強要して、そいつが壊れるまで…。
昨日まで兄貴がやってた奴がさっき下にいた。
だとすれば、今目の前にいるのはついさっきまでこんなとこ知らなかった奴ってことで…。
「ッやめて…ください」
「あ?誰に楯突いてんだ」
「ッひ…」
もし、もし、秋奈がこんな目にあってたら…すぐに助けられる。
何されても秋奈を逃がすのに、他人だと怖くて動けなくなる。
初めは止めてた。秋奈と女の子を重ねたから…。
でも、キレた兄貴にボコボコにされた挙句、何日も閉じ込められてそんな気力はなくなってしまった。