私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
地獄に落ちた日 夏樹side
大嫌いだ。
こんな世界、大嫌いだ…。
俺が生まれた直後、母親はいなくなった。
俺と兄貴を置いて、知らない男と出て行ったらしい…。
物心ついたころには暴力癖のある親父のご機嫌取りが生きる術で、その日を生き抜くのすら難しかった。
親父の機嫌を悪くすればその日なにも口にできないのは当たり前。
殴られて、蹴られても当たり前だった。風邪なんか引いた日には殺されかけた。
親父の機嫌を取ることだけを考えて、何とか生きていくのが精いっぱいだった。
それは、兄貴も同じだった。しかも、兄貴はへました俺の巻き添えになるのも多くて、そんな兄貴に殴られるのも当たり前だった。
小学校に上がって、助かったのはご飯が食べられること。
給食でしのいだのだって、何回もある。いつも同じ服で、給食は人の倍食べる。
いじめられるのも当たり前だった。
それでも、生きていくのに必死で、縋りついて生きた。
そんな生活が不意に終わったのは俺が小2の時。
兄貴が万引きして、補導されて、警察の目の前で親父が兄貴をタコ殴りにして、逆に捕まった。
兄貴は施設へ、俺はじいちゃん、ばあちゃんの家に引き取られることになった。