私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

「え?…恭也ちゃん…?」

「え?」

 聞こえてきたばあちゃんの声は兄貴の名前を言う。

 今までこっちに来たことなんかなかったから、思わず驚いた。

 じいちゃんも驚いた顔を浮かべて立ち上がろうと膝を立てる。

「ど…どうしたの!?こんな…。……え?きょ…恭也ちゃん…何を…」

 ばあちゃんの声が戸惑っているのか揺れる。何かあったのかな…。

 立ち上がって襖を開ける。

 廊下の先、玄関に佇んでいた兄貴は血まみれで、その手には鈍い光を放った何かを…。

「ッ夏樹、見るな!」

 じいちゃんの手が俺の視界を塞ぐ。

 だけど、完全にふさがる直前、兄貴の持ってた何かがばあちゃんの体の中に消えたのが見えた…。

 視界が真っ黒になった直後、つんざくような悲鳴が耳に飛び込んでくる。

 なに…?ばあちゃんどうしたの…?

「恭也!!やめんか!!!」

 強い力で後ろに引かれて、気づいた時にはもう居間の床に転んでいた。

 居間を出て行こうとするじいちゃんの背が、襖に遮られて消える。

 なんで兄貴がここに?

 なんで、どうして…。ばあちゃんは…?
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