私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「っせ…」
「え?」
「かえせ!!!それは、俺のだぁあああ!!」
「ッ…」
急に顔が変わったそいつに驚いて薬を手放す。
俺の手から離れたそれをそいつは掴んで、袋を破る。
え?と思った時にはもう遅くて、そいつはそれを全部口に入れてしまう。
「っな!?バカ!!吐き出せ!!」
そんな一気に入れたらどうなるか…。
吐き出させようとした俺の手をそいつは振りほどいてにやりと笑う。
だけど、急にその笑みは消えて、胸を押さえて苦しげな顔を浮かべる。
「おい!」
「っが…がぁぁあああ!!?」
急に叫んだそいつは、喉を押さえたまま床に転がって、しばらくもがいた後動かなくなってしまった。
「…は?」
何かが過る。
赤い何かにまみれた誰かを。勝手に何かが伝っていく。
あぁ、なんで忘れていたんだろう。ばあちゃんとじいちゃんのこと…。
ずっと忘れていた涙は止まらなくて、呆然とそいつを見下ろしていた。