私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「秋、もう会えなくなるかもって言ったから連れて来たんだろ」
「あ、そっか…」
男に言われた女の子が肩を落とす。
だから、咄嗟に悪いなって言葉が出た。
女の子が不満だというように頬を膨らませる。謝ったよな、俺…。
「瞬桜くん、そろそろ送っていくわ」
「あ、すみません」
「キミも、送っていくわ。家どこ?」
家…か。
帰る家なんか、ない。なくなった。
そんなこと言ってもしょうがねぇし。顔を上げて笑う。
「もう十分お礼してもらったんで、自力で帰るわ」
「え?でも…」
「んじゃ、ありがとうございました」
「え、夏樹くん!!」
頭を下げて、女の子に捕まる前に玄関に向かって、靴を履くなり外に飛び出す。
夜の街を走り出す。
光のない方向へ向かって、ひたすら走る。