私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
目が覚めたら、目の前にあの女の子がいた。…嘘だろ。
「…なんで」
「夏樹くんが商店街の人たちに抱えられてきたから。ついでに3日前だけど、覚えてる?」
夢、じゃなかった…。あの時の女の子と男がいて、夢と同じとこにいて…。
本当に現実なのか…?…あれ、こんな服だったっけ?
女の子から聞いた事情によれば、3日前に俺が倒れてるのを商店街の人が見つけて、俺が救急車呼ぶなと叫んだらしく、仕方なく女の子と男が看病しててくれたらしい。
全然覚えてなくて、マジか…と勝手に口から出てきた。
「ま、まさかずっと診てくれてたのか?」
「もちろん。体拭いてたのは瞬だけどね。勝手に脱がせてごめんね」
「…悪い。世話になった」
「どういたしまして。うどん食べる?」
「あ…ありがと」
差し出してくれるうどんはやっぱ熱くて、女の子と男も自分たちの分を持ってきて特に何を話すわけでもなく食べ始める。
ただ、食べてるだけなのに胸の奥が満たされていて、勝手に涙がこみあげてきて喉を通らない。
箸を止めて、その波が収まるのをじっと待つ。