私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「…そのこと含めて、全部話せ」
「え?」
「頼れる場所がねぇって、秋奈に頼め。土下座してでも、何でもしておいてもらえ。お前が普通に生きてくには、それしかねぇんだ」
秋奈なら知恵を貸してくれる。
例え志季に置けなくても、こいつを助けてくれるはずだ。
俺に手を差し伸べてくれた秋奈なら、きっと…。
そいつを置いて歩き出す。わざと早足に人ごみの多い方へ向かう。
「夏樹さん!待ってください!!」
後ろから聞こえてくる声を無視して足を進める。人ごみに紛れて追ってくるのを撒く。
しばらくして声も聞こえなくなって、あいつの姿は見えなくなった。
後は、あいつが勝手に戻って来ねぇように願うだけだ。
それで戻ってくるようなバカだったら、俺はもう何もできねぇ。
リツキに渡された鍵のロッカーに向かう。
多分、いつもの場所だろうしな。
まだ明るい駅の構内に入って、まっすぐコインロッカーに向かう。
4番…あれ、いつもよりでけぇほうだ。
鍵を開けてロッカーを見ると、ボストンバックが2つも出てくる。
おいおい、どんだけ多いんだよ。
その2つを両肩にかけてすぐにたまり場に向かう。
戻りたくない場所へ、こんなにも急いで向かう自分を笑う。