私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
頭がぐるぐる回っておかしくなりそう…。
驚いたまま保くんを見つめていると、保くんは急に立ち上がる。
「やっぱ、ダメですよね…」
「え?」
「すみません。忘れてください」
「ちょっと待った!!尾木くんの弟だから入れないとかじゃない。ビックリしただけだから。座って、いろいろ説明して」
階段を下りて行こうとする保くんを引き留めて、ソファーに座らせる。
向かい側に座って、改めて保くんを見る。
服もボロボロだし、何となく痩せてる気がする。
尾木くんは少年院に行ってるはず。この子はどうして…。
「どうして、帰る家がないって」
「…兄ちゃんと2人で、暮らしてたんです」
「え?」
そんなの、聞いてない…。
保くんは両膝の上で拳を握り、少しずつ話してくれた。
「両親、いなくて…。兄ちゃんが、育ててくれました。…だけど、兄ちゃん捕まっちゃって。俺も仕事探そうとしたけど、できなくて、家でなきゃいけなくなっちゃって…」
保くんの頬に涙が伝う。それを拭って隠そうとする保くんにハンカチを差し出せば受け取って、また話しはじめてくれる。