私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 手すりを掴んでいた手を離して、階段を降りていく。

 寝転がってる奴らを避けながら向かったトイレの水道で水を飲む。酒よりましだ。

 …せめて、できる些細なことでも、秋奈に恥じるようなことはしたくない。

 だから、酒もたばこも手を出さない。薬も…。

「…もう、会えねぇのにな…」

 でも、手を出そうとすると怒った声が聞こえる。

 夏って、俺を止める。だから、ダメなんだ。

 顔を上げる。だらしねぇぞ、俺。しっかりしろ。

 自分に活を入れて、トイレを出る。

 そう言えば、昨日のガキ、秋奈のとこに行けたのか?

 秋奈、怒ってるだろうな…。

 でも、ごめん。頼れる奴なんか、秋奈以外に浮かばなかったんだ。

 あそこ以外、どこにも…。

 また人を避けて、階段を上がる。

 もうすぐ目覚めていく倉庫。また、たくさん誰かが何かを失っていく。

「あ、夏樹。どこ行ってた?」

 幹部室に入れば、さっきまでいなかったリツキがいて、思わず視線を逸らす。

 リツキと2人きりとか最悪だ。
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