私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
そうこうしてるうちに兄貴は目の前にいて、兄貴の持ってる注射器が腕に刺さる。
それを入れられる恐怖から目を逸らすように目を閉じた。
―ドンドンッ
不意に響いたドアを叩く音。
その音に全員の動きが止まり、リツキが舌打ちする。
「なんだよ。うるさいな…」
「総長!女が木刀持って殴り込みに来ました!!」
ドアを開けた奴は必死の形相で報告に来た。
木刀持って殴り込みに来たって…。その女何者…?
兄貴が注射器から手を離し、立ち上がる。
リツキも舌打ちしながらも部屋を出て行こうとする兄貴に続く。
天パの奴も、小柄な奴も立ち上がる。
解放された隙に腕に刺さったままの注射器を引き抜いて壁に向かって投げつけた。
パリンとガラスが割れる音も外の喧騒であまり聞こえない。
助かった…。でも、一体誰が殴り込みになんか…。
「夏樹、来てみなよ。面白いものが見れるよ」
振り返ったリツキが笑う。
その顔に恐る恐るあちこち痛む体を引きずって部屋を出て、リツキたちが並んでるとこの横に行く。