私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 秋奈に見つめられた兄貴は動かない。

 何を、考えてるんだ…?

 その時、秋奈の後ろで立ち上がった幹部の1人。

 よろよろした足取りで、でもその手元が不意に光る。

「秋っ!!?」

「夏樹、この状況、忘れてたわけじゃないよね」

 口を塞がれ、暴れた直後に視界の隅で光る物が首に突き付けられる。

 普段とは違う低い声を出したリツキに、自分が拘束されていたのを思い出した。

 秋奈がケンカを始めた直後、助けに入ろうとした直後に組み敷かれて拘束されたんだった。

 立ち上がった奴が、秋奈に近づいていく。

 でも、秋奈はそれに気づかない。

「っん~!!!」

「黙ってろ」

 秋奈、逃げろ!お願いだから、気づいてくれ!!

 兄貴を見据えたまま返答を待つ秋奈。その背後に迫る凶器。

 ふらふらした足取りだったそいつは、走った勢いをつけてぶれがなくなっていく。

 秋奈に狙いを定め、まっすぐに向けられる凶器が迫っていく。
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