私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

「秋!!」

「え?」

 呼ばれた直後、きつく抱きしめられる。

 それが誰かなんて確認しなくても分かる。

 でも、なんで…。なんで瞬までここに…。

「…瞬」

「バカ!なんで1人で行った!なんで俺に何も言わなかった!」

 抱きしめられたまま、瞬の顔は見えない。

 だけど、抱きしめてくれる手は震えている。

「どれだけ心配したと思ってんだよ」

 耳元で呟かれた言葉は震えていて、涙腺が緩みそうになる。

 瞬の肩に頭をつけて、唇をかむ。

「ごめんなさい…」

 本当は怖かった。

 今だって、体が震えていて、涙が溢れそうになる。

 瞬に抱き着くと、きつく抱きしめ返してくれる。

 みんなが来てくれたことに安心して、緊張が切れそうになるのを必死につなぎとめる。
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