私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

「秋奈っ」

「え!?」

 六花に腕を掴まれて急階段を駆け上る。

 1階に残ったみんなはすでにケンカを始めようとしていて、いつも浮かべてる優しい顔なんてどこにもなかった。

「六花!みんな…」

「秋奈!ここから隣の家に移って逃げて!!」

「え…」

 六花が示すのは1番部屋の隅のある窓。

 確かにその窓からなら隣の家のベランダに飛び移れないことはない。

 だけど、なんでそんなに六花が焦ってるのかが理解できない。

 だって、彼らは人で、ただ夏樹の居場所を知りたがってるだけに見えた。

 なのに、なぜこんなにも警戒しているのかさっぱりわからない。

 なぜ、逃げなきゃいけないのかも、分からない…。

「警察を呼んで来て!足止めしてる間に…」

「どこ行くんだ?」

「ッ!?」

 ゆっくりとした足取りで階段を上ってきたのはキョウヤと呼ばれていた人。

 その人の目はあまりにも鋭くて言いようのない恐怖が襲ってくる。
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