私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「秋奈!」
「お嬢さんたち、ちょっといいかな?」
「え!?」
今六花が出ろと言った窓にさっきまでいなかったはずなのに、銀色の髪をした人が笑顔で私たちを見ていた。
六花に手を引かれて窓から離れると、軽い身のこなしで部屋に入って来たその人は、疲れたと何でもないように言って背伸びなんかしてた。
「で、夏樹は居たの?」
「見当たらねぇ。おい女。夏樹はどこだ」
逃げ場がない。キョウヤと言う人が徐々に近づいてきて腕を鳴らす。
近づかれるたびに息が出来なくなっていく。
恐怖が体中を包み込んで目の前にいる人が人ではなく、腹を空かせた猛獣のように見える。
手が伸ばされる。分かっているのに動けない…。
「秋奈に触るな!!」
「あ?」
「ッ…」
間に入った六花が伸ばされた手を払う。
だけど、キョウヤに睨まれた六花は息を飲んで体を震わせた。