私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

「言え」

「え…」

「夏樹の居場所。そいつが死んでもいいのか?」

「ッぐ…あ…あき…な…ッ」

 徐々に力が増してのは見てるだけでも分かる。

 このままじゃ、六花が…。でも、夏を渡すわけには…。

 不意に胸の奥が波打つ。歓喜に目覚めたそれは急激に思考を焦がす。

『剣を取れ。俺が蹴散らしてやる』

 頭に響く歓喜の声。

 視線を向ける先に、床に転がっている埃をかぶった木刀。

 ダメだと律する心と、これしかないと判断する脳。

 六花と夏、2人を助けるためには…。

 思考を飲ませる。赤に染める。

 心の奥で目覚めたそれが歓喜に笑う。

「修羅、2割」

 思考を、堕とす。
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