私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
視覚、聴覚。感覚と言う感覚が研ぎ澄まされる。
目の前の人の隙を突き、脇を駆け抜ける。
床に転がった木刀を手に持つと一気に落ちそうになった意識を繋ぎとめる。
「あ?」
驚いたように目を見開くキョウヤをしり目に、銀髪を睨む。
考えるより先に体が動く。
銀髪の前に移動し、狙うのは彼の首。
まっすぐ突き出した木刀は、突然後ろに引かれた銀髪の残像を切り裂いた。
目の前に倒れ込んできた六花を抱きとめて床に寝かす。
少し距離を置いた2人に木刀の先を向けた。
「え、何この子。いきなり雰囲気変わったね」
「…夏樹を手下に置いただけのことはあるってことか」
ニヤリとそれが喜びで浮かんだ笑みではないことくらい分かる。
楽しさではあることには間違いないと思う。
だけど、その笑みはあまりにも危険すぎる。
「キョウヤ、ヤル気?」
「っは、どの程度か見るだけだ」
固く握られた拳が迫ってくる。それを木刀でしなし、受け止めながらも六花から離れる。
下手に巻き込まれでもしたら大怪我しかねない。