私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 それにしても、重い。

 動きは軽く見えるのに、1つ1つの拳に重みがあるのが木刀越しでも分かる。

 こんなのまともに食らったら動けなくなる。

 狭い2階で逃げながらどうするかを必死に考えても頭は回ってくれない。

「逃げてるだけか?あ!?」

「ッ…」

 今までよりも強い1撃に体が後退する。

 らちが明かない。素手相手にと躊躇した心を抑え、本能に任せる。

「修羅、4割」

 思考を堕とす。赤に染める。

 致命傷は与えなくていい。でも、腕は貰う。

 一気に踏み込み、木刀を振るう。

 右腕目がけて振り下ろした木刀は確かにキョウヤの右腕を打つ。

 …だけど、その木刀を掴まれた。

「こんなもんか?」

「ッ!?」

「さっきから意味わかんねぇことぶつぶつと…」

 木刀を掴まれたまま拳が飛んでくる。

 咄嗟に手を離して避けたけど、木刀を離したせいで修羅が急激に遠のく。

 同時に先ほどまでの動きも出来なくなる。
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