私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 怒鳴り声を上げた瞬桜が一瞬の迷いなく傍に転がっていた資材を握り、駆け出してくる。

 その動きは信じられないくらいに速くて、キョウヤの目が見開かれる。

 1、2度瞬桜が振るう資材を交わしたキョウヤだけど、舌打ちをして抱えていた秋奈を瞬桜に向けて放る。

 怯むことなく秋奈を片手で受け止めた瞬桜は、受け止めた衝撃に合わせて2歩後ずさり、片膝をついた。

「秋、しっかりしろ」

 片手で秋奈を支えたまま肩を揺する。だけど、秋奈の意識が戻る気配はない。

 今なら2人ともこの場から逃げられる。

「瞬桜!秋奈連れて逃げて!!」

「ッ…六花!?」

「私のことはいいから!!」

「おい、誰も逃がすなよ」

 私の言葉をかき消すようにキョウヤが笑みを浮かべながら告げる。

 新しいおもちゃが見つかったと言わんばかりの目に悪寒が走った。
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