私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 瞬桜は秋奈を背負い、逃げることだけを考えたのか資材を手放す。

 傷だらけで血まみれな秋奈を見て、私たちを助ける余裕を失くしたみたいだ。

 それでいい。2人がこいつらの手に落ちないなら、もうどうなったっていい。

 秋奈と瞬桜が助かって、こいつらに引きずり込まれなければそれで…。

「おいおい、逃げんのかよ」

「…」

「無視か?あ?」

 キョウヤが好戦的な視線で瞬桜を見る。

 だけど、瞬桜は逃げられる隙を探してるだけで相手にしない。

 せめて秋奈に意識があって、自分で逃げられたら…。

 そう願ってはいられないほど緊迫した状況に包まれる。

 先に動いたのはキョウヤだった。

 何の躊躇もなく怪我人を背負っている瞬桜の顔面を狙って突き出された拳は、空を切る。

 だけど、その動きの速さに瞬桜は舌打ちして、少しずつ後ずさる。

 シャッターが閉まったこの状況では逃げられない。

 シャッターを開けている間に捕まってしまう。
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