私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「ッ!?」
逃げ続けていた瞬桜に追いついたキョウヤは、瞬桜の服を掴むと後ろに投げ飛ばす。
その拍子で秋奈はその場に残されて瞬桜だけが距離を離される。
受け身を取ってすぐに身を起こした瞬桜は動きを止めた。
キョウヤが秋奈の首を掴んだから…。
「夏樹はどこだ」
「夏樹?」
「さっさと答えろ」
「ッは…」
無抵抗な秋奈の首を掴んだままキョウヤは秋奈を持ち上げる。
地面に足が届いていない秋奈はみるみるうちに苦しげに表情を歪ませる。
なのに、瞬桜は何も言わない。
「どうした?こいつが大事じゃなかったのか?」
「っあ゛…ぁぅ…」
「ッ…」
「吐かねぇとこいつが死ぬぞ」
「……」
声も漏らせないほど秋奈の首を締め上げていくキョウヤ。
なのに、瞬桜は何も言わない。手に爪が食い込んで血が流れるほど怒りは募ってるはずなのに、瞬桜は何も言わない。
どうして、瞬桜…。秋奈を助けてよ…。
銀髪に口を塞がれてただ泣くことしかできない自分が酷く憎い。
見ているだけで何もできない自分が、秋奈を救えない自分が憎くて、死んでしまいたいくらい苦しかった。