私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
兄貴の目に怒りが走る。だけど、殴られることはなかった。
だが、狂気に歪んだ笑みが深くなる。
「しつけがなってなかったみてぇだな。悪いことをしたら謝んのが筋だろうが」
どの口がそんなこと言うんだよ。
関係ない秋奈や瞬桜をあんなに傷つけた奴が何を…。
無言で睨み合う。昔ならとっくに負けてた視線を押し返し続ける。
「…はぁ、兄弟ケンカは帰ってからにしない?」
言葉を挟んできたのはリツキだった。
兄貴と同級の、ずっと昔からの知り合い。
2年前から変わらない銀髪と飄々とした態度。何考えてるか今でもよく分からない。
リツキの言葉に兄貴は舌打ちしながらも受け入れたようで、俺を睨みつける。
「行くぞ」
そう言いながらも兄貴はなぜか気絶したまま倒れている秋奈の方へ歩いて行って、その体を担ぎ上げた。
「な…」
「あ?文句あんのか」
「…あるに決まってんだろ。誰も連れてくんじゃねぇよ!!」
よく見ればリツキも六花を拘束して、名前を知らねぇ奴も沙緒の腕を掴んでた。
冗談じゃない。これ以上巻き込めるかよ…!