私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
「夏樹」
「…5分」
「あ?」
「5分だけ、くれ…」
拒否されたら、従うつもりだった。
これ以上兄貴を逆なでしてろくなことはないのは分かっているから。
ただのわがままだ。誰も納得しない、俺のわがまま。
「まぁ、いいんじゃない?キョウヤ、待ってあげようよ」
意外にも助け船を出したのはリツキだった。
兄貴は舌打ちをして裏口から出て行く。
それに続く奴ら。最後に残ったリツキは意味深な笑みを残してドアの外に消える。
ただ、暴力が過ぎ去ったここは、あまりにも空しくて、いつも笑っていた場所とは思えないほど寒気がする。
もっと早く戻って来ていれば。
…いや、俺が早く蹴りを付けに行っていれば、こんなことにはならなかったのに。
「…ごめん。…ごめんッ」
誰に対しての謝罪かなんかわからない。
でも、謝らずにはいられなかった。
俺のせいで傷つけた。俺のせいで巻き込んだ。俺のせいで…。
勝手に浮かんだものが流れ出して、床にシミを作っていった。