私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

「…夏樹」

 背後から聞こえるのは、六花の声。

 俺は、六花を利用して、逃げた。

 六花がいなければ2年も逃げることなんかできなかったはず。

 目を強引に拭って首だけを動かして精いっぱい後ろを向く。

「…六花、悪かった」

「…何、謝ってるの。…ねぇ、戻ってくるんでしょ?…ねぇ!!」

「…2人のこと、頼む」

「ッ…」

 戻れるわけない。兄貴が俺を手放すはずがない。

 だから逃げたんだ。うんざりだったから。

 逃げるしか、方法がなかったから。

 でも、今度逃げたら、秋奈と瞬桜…この商店街にも被害が出るかもしれない…。

 だから、もう逃げるわけにはいかないんだ。
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