私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
瞬桜と秋奈を順に見て、背を向ける。
ありがとう、俺を助けてくれて。
ありがとう、2人の中に入れてくれて。
ありがとう、ありがとう、ありがとう…。
どれだけ言っても、俺がもらったものは伝えきれない。
でも、さようなら。
足を無理矢理動かす。
行きたくないと叫ぶ心を踏みにじって、前へ進む。
「…なつ」
「秋奈?」
「…な、つ…」
掠れた声なんか、聞こえないと思ってたのに、呼ぶ声が聞こえたから振り返ってしまう。
日真里に抱き起されてるのに、視線は俺に向いていて、弱々しく伸ばされる手がふらふらと宙を漂う。
「……………」
声にすらならない声が聞こえた気がした。
だから、笑った。
安心してほしかったから。
「じゃあな、秋奈」
秋奈が好きだって言った笑顔で、さよならを告げる。
顔を正面に戻し、俺は志季を去った。
夏樹side END