私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
ベッドから降りた瞬桜は差し出された松葉づえを押し返して片手を腰に当てる。
母親は納得してない顔。だけど、瞬桜の険しい表情に負けたみたいだ。
「瞬桜、何食べれそう?」
「別に何でも。…先、帰っててくれ」
「え?…瞬桜、あなたまだ安静に…」
「分かってる。…でも」
瞬桜が言いたいことは嫌でも分かる。
秋奈の傍に少しでもいたい。
この2日間、本当はベッドで寝てなきゃいけない瞬桜が車いすの移動を約束してまで、時間が許す限り秋奈の病室に行っていた。
もちろん監視役と任命されて私も一緒に。
「瞬桜、秋奈ちゃんのことが心配なのはわかるけど、秋奈ちゃんの家族に余計な気を使わないの」
瞬桜の母親が言うことはもっともなのかもしれない。
だけど、目が覚めたと連絡が来るまで行かないなんてできない。
「分かってる。でも、ほっとけないんだよ」
「…分かった。瞬桜、帰るときに連絡しろ。六花ちゃんも一緒に送るから」
「あなた…」
「瞬桜がそうしたいって言ってるんだ。それに、秋奈ちゃんのお母さん、寝てないみたいだからな」
折れたのは父親の方で、渋る母親を連れて先に家に戻って行った。