私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
秋奈の病室は1階上がって、隣の棟の病室。
そこまで瞬桜のペースで移動して、異様に静かな病室が並ぶフロアに来る。
「あら、永井さん退院は…」
「さっきしてきました」
「そうですか、お大事に」
すっかり顔なじみになってしまった看護師と少しだけ言葉を交わした瞬桜は、また歩き出す。
ナースステーションの向かえにある病室の1つに、宮田秋奈とパソコンの文字で書かれたプレートがある病室の扉をノックして、扉を少し開ける。
「あら、瞬桜くん、六花ちゃんいつもありがとう。瞬桜くん退院できた?」
「はい。ついさっき」
「そう、無理はしちゃダメよ」
秋奈より弟に少し似た秋奈の母親は、くすりと笑みをこぼしたけど、目の下のクマは濃くなる一方だった。
病室に入ると、秋奈が眠るベッドの傍のいすに腰掛け、秋奈の手を握ったままベッドに頭を預けて寝息を立てる弟は、私たちが来たことにも気づいてないみたいだ。
「秋奈、瞬桜くんと六花ちゃん。来てくれたよ」
秋奈の母親が眠ってる秋奈に声をかける。だけど、当然のように反応はない。
頭には包帯、左頬にはガーゼが貼られてる。
布団に隠れた体にはまだたくさんの包帯やガーゼが当てられているらしい。
2つの点滴が細い腕に繋がれているけど、これでも減った方。
2日前は輸血も同時にあって、3つの点滴もついていたんだから。