私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
ううん。誰も私を責めないのが辛いんだ。
あの状況で、全く怪我をしてないのは私だけだったから。
全部知ってるのに、傷つかなかったことが酷く辛い。
責めてくれればいいのに誰も怪我がなくてよかったって笑うのが嫌だ。
秋奈の怪我を半分でもいいから私が受けていればよかったのに。
立ったまま、秋奈の顔をじっと見つめて感情が揺れるのを抑え込んだ。
「…あれ、俺…」
「春馬」
「あれ、瞬桜さん…。起こしてくれればよかったのに」
寝ぼけ眼の弟が起きる。
瞬桜がいるのを見ると、すぐに身を起こして、まだ眠ったままの秋奈の顔を見て苦笑した。
「起こすか。…それより、お前本当にいいのか?」
「行けるわけないじゃないですか。姉ちゃんこんな状態なのに…」
瞬桜が言ったのは、弟の剣道の全国大会。それは明日、東京の方で行われる。
だけど、2日前に秋奈が起きなければ行かないと言って、とうとう欠場を決めてここに残ったらしい。
ずっとそのために頑張ってきたらしいのに、3年間の目標も、紅蘭の推薦枠の希望も捨ててここに残った。