私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
それから、医師や看護師が飛んできて秋はまた検査を受けた。
とりあえず大きな障害は見られないという言葉に戻ってきたおばさんはほっとした顔をして、春馬は秋奈に抱き着きそうな勢いで喜んでた。
聞いてなかったけど、結構やばい状況だったらしい。
ただ、少し左腕を動かしにくそうにしているのを見て、リハビリを頑張ろうと医者に励まされた秋はあいまいに頷いていた。
多分検査で疲れて眠いんだろう。
医者や看護師が病室から出て行くと、秋は春馬の頭をぽんぽんと撫でて笑う。
「秋奈、何か飲む?」
おばさんの言葉に頷いた秋は、声が出ないのかさっきから一言も発さない。
医者の質問にも頷いたりしてただけだ。
お茶を受け取ろうとして顔を歪めた秋に、おばさんからコップを貰って口元に運ぶと自分でできると言わんばかりに視線を送ってきて少し笑える。
「ちょっとくらい甘えろ」
そう言うと急に大人しくなってお茶を飲む。
離れようとすると服を掴んできてもたれかかってきた。…急に甘えるのかよ。別にいいけど。
肩に手を回すと、安心したように表情をほころばせて体を預けてきた。
しばらくしてそのまま眠った秋奈を寝かすと、丁度面会時間が終わる。
おばさんと春馬にまた明日と告げて病室を出て、家に戻った。