私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
嘘つき 瞬桜side
あれから1週間がたった。
秋の声は戻らないままだ。声は戻らないが、体の方はもう自宅療養でも大丈夫と診断が降りて、秋が退院したのは昨日。
週1回通院はするらしいけど、自分で歩けるし結構元気だ。
六花と家を訪ねると、秋が顔を出して出迎えてくれる。
「秋、散歩するか」
玄関先でそう言うと首を横に振る。手でバタバタ顔を仰いで、暑いと口が動く。
家に入ると、リビングに通されて座る。
何すると言わんばかりにゲームやトランプを出してくる秋を止めて、隣に座らせる。
「秋、ちょっと話そう」
嫌な顔をしたが、やがて渋々と言うように頷く。
話したがらないのは、自分の言いたいことが全部伝えられなくてイライラしてるからだそうで、入院中も先生にうまく伝わらずイライラしていたのを覚えてる。
でも俺とは結構スムーズに意思疎通出来てただろうが…。
でも、病院の先生とうまくいかなかったのが秋の中で新たなストレスになったのは確からしい。だからあまり話したがらない。
「秋奈、これ」
不意に六花が差し出してきたのは袋に入った何かで、秋も不思議そうな顔で受け取る。
見ていい?と首をかしげて聞く秋奈に頷いた六花を見て、秋奈は袋の中を出す。
出てきたのはホワイトボードとペンで、それをキラキラした目で見た。