私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)
秋の記憶が戻る気配はない。
でもそれは思い出さないようにあの日何があったのか誰も教えようとしないからだ。
いや、正確には言わないように言いつけられた。
怪我をした理由も、夏樹がいない理由も何もかもわからないままの秋はその現状にずっとイライラしていたらしい。
じっと答えを待つ秋になんと言っていいか分からず六花と顔を見合わせる。
「…夏樹、今家に戻ってる」
六花が口にしたのは嘘。だった。
秋は突然のことできょとんとした顔を六花に向ける。
「だから、夏樹しばらく帰って来ない」
「…」
またホワイトボードに書き始めた秋は、それをすぐに見せる。
『いつ帰って来るの?』
「…分からない。また、連絡来たら教えるから」
六花の言葉に渋々ながらも頷いた秋。
でも、その顔は納得してませんと言いたげで、不満が溢れてる。