偽りの空
母が遺体を確認し、
はっきりアイツだとわかった。
1年前と同じ姿。
でも
命はなかった……。
「誰も泣かないなんておかしいな。」
私の耳にボソボソっと誰かが言った。
「誰?あなた」
「失礼。俺はこの近くにある探偵事務所をやっている沢辺将人といいます。」
と、名刺を差し出した。
「なんで探偵さんがこんな場所に?」
「発見者なもんで」
「で、なぜ悲しまないんだい?」
「悲しくないからですよ」
私はにっこりと笑った。
「と言うと?」
「憎んで憎まれての関係だった私達が悲しむはずないでしょ?」
「確かに。」
「だから逆に泣いたらおかしいです。」
その日はそのまま家に帰った。