キミの笑顔にさようなら〜短編〜
宮野宏太…先輩?
「えっと……な、なん…ですか…?」
恐る恐る私は宏太先輩に声をかける。
宏太先輩は、背があまり高くない。
170cmくらいかな?
顔は…すごく整っている。
ふわふわの茶色い髪。白い肌。右に開いた二つのピアス。2重でくっきりした目。スッと通った鼻。かっこいい…ということは、分かっていただけたでしょうか?
「…彩芽ちゃん…だっけ?」
宏太先輩は、背は男の人の中では大きくはないが、私からしたらすごく大きい。
俯いてる私の顔を覗き込むように体制をかがませている。
私の身長は、148cmという小ささ…
すごくかがんてくれている先輩。
でも……でも、顔が…近いです…。
「…は、はい…彩芽です…。」
私はしどろもどろになりながら一生懸命答える。宏太先輩は、少し笑って携帯を取り出した。
「彩芽ちゃんさ?メアド…教えてくれる?」
「…へ?」
いきなりのことに私は変な声を出してしまう。…め、メアド…。どうして、メアドなんて?宏太先輩は、どうして私のメアドを?
少し不思議に思ったりもしたけど…断る理由もなかったので、私は宏太先輩とメアドを交換した。
「ありがとう、彩芽ちゃん」
先輩は、ニコリと笑う。
凄く凄く優しい笑顔…。
"天使の笑顔"
女子の間では、そう呼ばれるほどの笑顔…。
確かに、すごく優しい笑顔です…
「……?彩芽ちゃん?どうかした?」
先輩が、不思議そうに顔をかしげる。
私は、ブンブンと顔を振って「何でもないです」と答えた。
先輩は、また微笑んで「授業頑張ってね」と言いながら私の頭にポンッと手を置いて階段を上がって行った。
今日は、凄い日です。
先輩に、メアドを聞かれたり天使の笑顔を見れたり、頭に手を乗せられたり。
たくさんのことがあってびっくりです。
「あ!授業!!!」
私は、急いで理科室に向かった。
が、結局間に合わず怒られてしまいました。
「罰として佐々木は、放課後先生の手伝いをしなさい。」
先生の手伝いか…。
私は素直に「はい」と言って席についた。
今日は、見たいテレビがあるのにな…。
でも、ここでそんな事言ったら余計に怒られちゃうな…。
私は、少し残念に思いながら授業を受けた。
授業が終わってすぐにメールが届いた。
『授業、お疲れ様。分かるかな?宏太です。』
とても、丁寧な言葉で送られてきたメール。
なんだか、ドキドキしました。
敬語で丁寧な言葉使い。
少し驚きながら私は返事を打ち始めた。
『ありがとうございます。分かりますよ!宏太先輩も、お疲れ様です。』
少し文に悩んだけど一生懸命先輩にメールを打った。
茜と千紗が近づいてきて驚いた顔をしている。なんで、驚いているんだろう?
「…だ、誰とメールしてたの?彩芽」
茜がびっくりした顔のまま聞く。
私は、先輩だよと答える。
「名前は?!」
千紗が前のめりになりながら聞いてきた。
ふ、二人とも…こ、怖いです…。
「宏太先輩…だよ?」
私は少し口ごもりながら精一杯答えた。
茜と千紗は、顔を見合わせて次はニコニコし始めた。「そっかそっか」と言って教室に向かって歩き出した。
なんか、よくは分からないけど…まぁ、いいかな?
放課後、私は先生に言われた通り居残りをして、書類の整理を手伝った。
整理が終わったのは7時近かった。
「はぁ…疲れたな…」
茜と千紗には、先に帰ってもらってるし…。
ひとりで真っ暗の道を歩き始めた。
バスあるかな……。時間を確認しようと携帯を探す。
「あれ?携帯……ない!!!」
携帯、今日の机に入れっぱなしにしちゃった!
私は、すぐに来た道を戻り始めた。
学校について教室に向かう。
やっぱり、机の中に入っていた。
「あ…メール?」
お母さん、茜、千紗…
それから……宏太先輩…
お母さん、茜、千紗にすぐにメールを返して、どうしたんだろう?とらいうおもいで宏太先輩のメールを開いた。
『今どこ?』
なにか、あったんのかな?
私に、用事があったんでしょうか?
『学校です。』とだけ打ってカバンに無操作に携帯を入れた。
教室から出て歩き始めてすぐに携帯が鳴った。
電話?誰からだろう?発信者は、"宏太先輩"
からだった。
ビックリして電話に出た。
「はい?もしもし?」
『今、学校なの?』
いつもの落ち着いた声で宏太先輩は聞いてきた。
「はい?」
宏太先輩は、いきなり電話を切った。
なんだったんだろう?不思議に思いながら駅に向かって歩き始めた。
少し歩いたところで一台のバイクが私の横で止まった。
「彩芽ちゃん?」
「は、はい?こ、宏太先輩…?!」
宏太先輩がバイクから降りて私の横に立つ。
どうしてここに宏太先輩が…いるんだろう?
「どうして、こんな時間まで学校にいるの?」
先輩の顔が少し怖かった。
私は、俯いて何も答えられなかった。
「…あ、ごめんね?その…心配だったんだよ」
私は、ゆっくり顔を上げて先輩を見る。
先輩は、さっきとは変わって凄く優しく微笑んでいる。
「…あの、携帯を学校に忘れてしまって…取りに戻ったんです…それで…こんな時間に…」
私は、一生懸命理由を話す。
つ、伝わったかな…?
先輩は、少し考えて「そっか」と微笑んだ。
少し、帰り道が怖っかった私…でも、先輩が来てくれて安心した。
「送るよ」
「へ?いえっ、大丈夫ですよっもう、遅いですし、先輩のお家の方も心配しますっ」
先輩が送ると言ってくれたことは本当に嬉しかった。でも、もう遅いし帰らないと先輩がお家の人に怒られてしまいます…。
「ふふ、面白いことを言うね…大丈夫だよ、送るよ、駅に行くのかな?」
先輩は、クスクスと楽しそうに笑ってる。
なにか、変なこと言った?のかな?私。
先輩は、バイクを道の端に置いて私の手をそっと握った。
「暗いし、危ないからね」
私を見て優しく笑っている。
あぁ…、先輩の笑顔って本当に優しい笑顔だな…。
先輩の笑顔を見るとすごく安心する。
駅に着くまでずっと手を握って歩いてくれた。暗い道だったけど怖くなかった。
先輩の笑顔。先輩の手。すごく安心できるものだった。
歳が…上だからなのかな?
駅に着いても電車が来るまで先輩はずっと一緒にいてくれた。
「じゃあ、気をつけてね、また学校で」
「あっ、ありがとうございますっ先輩も、気を付け帰ってくださいね?」
先輩は、にこっと笑って歩き始めた。
電車に乗ってもまだ手から先輩の温もりが離れない。
心配して来てくれて、手を繋いで送ってくれて、お話して…なんだか、名残惜しい気持ちです。
「もっと…一緒に居たかったな…」
誰にも聞こえないようにそっと呟いた。
また、明日も会えるのに…さみしい気持ちです。なんでだろう…?
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