夢の続きは隣の部屋で…
「はぁ~~。もし次に会ったらどんな顔すれば良いのか分かんないよう」
ベランダの手すりに肘を置き、外を眺める。春になったとはいえ、まだまだ夜風は冷たい。
「まさかこんなに簡単に会えるとは思ってなかったけど、だからってあいつがたっくんだなんて信じたくないなぁ…」
はぁ…と大きくため息をつき、手すりに顎を乗っける。ちょうどベランダの下にある道を、カップルが腕を組んで歩いている。
「私も普通にたっくんに再会して、ああやって歩き…ってあれ??」
さりげなく目に留まったカップルだったが、乃里花の目が一瞬でくぎ付けになる。
「あれっ、、たっくん!?って隣にいる女の人、昨日と違う…!?!?」
思わずベランダから身を乗り出し、真下を歩く2人を凝視してしまった。
今朝玄関で見かけた女の子とは違い、茶髪のロングヘアを胸元でウェーブさせ、遠くから見てもハタチは超えているかのように見える。
女の人は嬉しそうに微笑みながら、拓登と思われる男の人の腕に自分の腕を絡ませ、顔を腕に傾け少し上機嫌に見える。
一方の拓登は無表情のまま、ポケットに両手を入れてただ前を向いて歩いていた。
「えっ…浮気?それともなに?お姉ちゃん??」
拓登に姉がいるといった話は聞いたことなかったが、ここは姉ということにしておかないと少々ややこしい場面を目撃したことになってしまう。
ドキドキする気持ちを抑えられず、2人のことを目で追ってしまう。
そのとき、ふと上を見上げた女の人と目が合った気がした。
「やばっ!!」
乃里花は見てはいけないものを見た気がして、慌てて部屋に戻った。