夢の続きは隣の部屋で…
高校生活初日は、授業がないので午前中のガイダンスで下校になる。
乃里花は少しだけクラスメイトと話をすると、帰路についた。
前後と隣の席の子とはなんとか話せ、連絡先の交換が出来た。まずは上々な滑り出し。

「お昼どうしよう。お母さん、、帰っちゃったしなぁ」

本来なら母と一緒にお昼ごはんを食べようと思っていたが、急に仕事が入ったらしく入学式を終えてすぐに帰ってしまった。


とりあえず電車に乗ろうと、乃里花は駅へ向かい、ちょうど来ていた電車に乗り込んだ。
朝は満員だった電車も、昼間は席こそ埋まってはいるが数名が立っている程度でゆったりとしている。乃里花はドア付近に立つと、床に鞄を置きぼーっと外を眺める。

『東京はすぐに電車が来るから良いなぁ』

乗車時間は約10分。時刻表とにらめっこして駅に着く時間を調整しなくても、ふらっと来れば乗れるほど本数が多い。改めて乗る東京の電車に乃里花は感動した。

電車は次の駅に着くと、ゆっくりとドアが開く。
隣の駅にも高校があるのだろうか、同じように新年度初日を終えた男子高生が数名乗ってきた。
乃里花は乗ってくる人たちの邪魔にならないよう、鞄を持つと少しだけ移動する。


「あれ?君、、今朝の!また会ったね~」

ふと、聞いたことのある声が耳に入る。乃里花が前を見上げると、今朝階段から落ちそうになるのを助けてくれた男子高生が立っていた。今朝と同じ爽やかな笑顔を見せると、ヒラヒラと手を振ってみせる。


「…朝の、、本当にありがとうございました」

咄嗟にお礼の言葉が出る。ご丁寧に深いお辞儀を添えて。

「いえいえ、転ばなくて本当に良かったよ!…あっ拓登、さっき話してた朝の子、この子だよ」

そういうと視線を乃里花から一緒に乗ってきた友達にうつす。顔をあげた乃里花も、つられてそちらを向いた。

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